2026年第一号熱帯暴風雨「ノカエン」 フィリピン東方で発生・北上し熱帯低気圧に減衰した9日間の気象記録
2026年1月、北西太平洋で発生した熱帯暴風雨「ノカエン」は、フィリピン東方海域を北上し、現地名「Ada(エイダ)」として監視対象となった。
気象庁の解析では、1月14日に熱帯低気圧として発達し、1月15日06時(UTC)に熱帯暴風雨へ移行した。
ノカエンはフィリピン東部海域で勢力を強め、沿岸部では強風や大雨への警戒が続き、フィリピンでは2人が死亡、2人が負傷した。
その後、北西太平洋上で勢力を失い、1月22日に熱帯低気圧として消滅した。
海上擾乱から熱帯暴風雨へ——フィリピン東方で進んだノカエンの形成過程
ノカエンの前身となる熱帯擾乱は、2026年1月13日18時(UTC)に北緯7.7度・東経132.7度付近で確認された。この段階ではまだ熱帯低気圧として正式分類されておらず、中心気圧は1004 hPaの発達前の低気圧性循環だった。
その後、システムはフィリピン東方の暖かい海域を西寄りに進みながら対流活動を強め、1月14日に気象庁の解析で熱帯低気圧へ発達した。中心付近の循環が次第に明瞭となり、雲域の組織化が進行した。
1月15日06時(UTC)、ノカエンは熱帯暴風雨へ昇格した。気象庁の分類では、最大風速や中心気圧の解析を基に熱帯暴風雨として追跡され、その後フィリピン東側の海域で発達を続けた。
フィリピン大気地球物理天文サービス管理局(PAGASA)は、国内監視区域内に入ったノカエンをフィリピン名「Ada(エイダ)」として発表した。現地では沿岸地域や低地を中心に防災準備が進み、海上では荒天への警戒が強まった。
北上と最盛期——フィリピン東岸でSignal No.2発令を伴った強風雨
ノカエンは1月16日から17日にかけてフィリピン東方海域を北上し、熱帯暴風雨として最盛期を迎えた。PAGASAの解析では、最大風速は約85 km/hに達し、中心気圧は994 hPaと評価された。一方、気象庁のベストトラックでは同時期の中心気圧を996 hPaとして解析しており、観測機関による算出基準の違いがある。
1月17日09時(UTC)、ノカエンは北緯14.2度・東経124.5度付近に位置し、発達のピークを迎えた。気象庁の10分平均風速基準では熱帯暴風雨の勢力を維持し、フィリピン東岸では風雨への警戒が高まった。
PAGASAはノカエン(Ada)に対して熱帯低気圧警報信号(TCWS)を発令し、地域によってSignal No.1およびSignal No.2を設定した。対象地域では強風、短時間の大雨、沿岸部の高波に対する注意が呼びかけられ、住民や自治体は避難準備や交通規制を継続的に実施している。
ノカエンの影響は特にフィリピン東部の沿岸地域で表れた。大規模な台風上陸ではなかったものの、熱帯暴風雨による降雨と風の影響で一部地域では浸水や生活への支障が発生した。被害報告では2人の死亡、2人の負傷が確認され、経済損失も記録された。
日本列島や中国沿岸への直接的な影響は確認されなかった。ノカエンはフィリピン東方海域から北東方向へ進み、東アジア沿岸部から離れた海域で推移した。
再発達と衰弱の変化——北西太平洋で終息へ向かったノカエンの後半経路
最盛期を過ぎたノカエンは、1月18日以降に勢力低下の段階へ入った。1月18日03時(UTC)には中心気圧が998 hPaとなり、風速も低下傾向を示した。
その後、ノカエンは北東方向へ移動しながら一時的な強度変化を見せた。1月20日00時(UTC)には再び熱帯暴風雨として解析された時間帯があり、北緯17.5度・東経129.1度付近まで進んだ。
しかし、周辺環境の変化により組織的な発達は維持できず、同日15時(UTC)には再び熱帯低気圧へ弱まった。中心気圧は1001 hPaまで上昇し、循環構造も次第に不明瞭となった。
1月21日以降、ノカエンは北西太平洋上でさらに衰弱し、1月22日06時(UTC)、北緯11.2度・東経134.6度付近で熱帯低気圧として消滅した。発生前の擾乱確認から消滅まで、約9日間にわたり海上を移動した熱帯システムだった。
1月の熱帯活動を記録したノカエン——監視体制と沿岸防災に残る気象的意味
ノカエンは2026年1月に北西太平洋で活動した熱帯暴風雨として、冬季の同海域における熱帯活動を示す事例となった。1月の北西太平洋では熱帯低気圧の発生数が少ない時期にあたり、2019年の「パブーク」以来となる1月の命名熱帯暴風雨として、発生から発達、消滅までの過程が記録された。
フィリピンでは、PAGASAによる早期情報発信とTCWS運用が災害対応の中心となった。沿岸部では海上活動への制限、自治体による警戒態勢、住民への避難情報提供が実施され、熱帯暴風雨に対する地域防災の対応が進められた。
日本では気象庁が西北太平洋の熱帯低気圧情報を継続的に解析し、台風シーズン以外でも発生する熱帯システムの監視を行った。中国沿岸への直接的な影響はなく、中国気象当局もノカエンによる中国近海への直接的な影響はないと判断した。
ノカエンは1月14日の熱帯低気圧化、1月15日の熱帯暴風雨への昇格、1月17日の最盛期、1月22日の消滅という経路をたどった。フィリピン名「Ada(エイダ)」として記録されたこの熱帯暴風雨は、冬季の北西太平洋における熱帯活動の監視、情報伝達、沿岸防災の重要性を示す気象記録となった。


